ここ1年ほど、夜になるとアベマズ・白鳥翔(38)は不思議な感覚に襲われることがある。
ゴールのない、終わらないマラソンをずっと走り続けている。そんな感覚。
チームがMリーグで優勝した後から感じるようになった。
「一番大きな団体で、一番強い麻雀(マージャン)プロになる」と2006年、大学1年で日本プロ麻雀連盟の門をたたいた白鳥。
決して届くことはないかもしれない。だけど、いつかかなえたいと願い、人生の地図に二つの大きなゴールを書き込んで走り出した。
高校時代、白鳥は二階堂亜樹(風林火山)や滝沢和典(麻雀格闘倶楽部)が載っている専門誌を買うと、待ちきれなくて授業中に読んでいた。彼らがCS放送チャンネル・モンドTVの番組で打つ姿をかじりつくように見ていた。だから、一つ目のゴールが「モンドの放送対局出場」になることは必然だった。
舞台に立つため、よそ見している暇はない。最初の4年間は大学に通っていたが、授業を受けるか麻雀をしているかの生活。仲の良い友人は1人、2人だった。
なりふり構わず走り始めた。
ただ、走り続けられないかもしれなかった。
17歳の時だ。友人との麻雀の最中に突然、過呼吸になってしまう。
プロになって18年。白鳥翔は終わりのないマラソンを走ろうとしている。人生の伴走者「マツ」と出会い、「多井さん」は「隆晴」になった。そして、二つ目のゴールを切った先にあるものとはーー。
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「なんだこれ、死ぬかも」…